過去の演奏会

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これまでに、以下の演奏会を開催しました。






ラミラミ音楽団 第一回演奏会
日時:2009年6月28日(日) 14:00〜
場所:狛江エコルマホール
指揮:徳永 輝、 池田 佳正

演奏曲:
<第1部>
 ・春の猟犬(A.リード)
 ・カンタベリーコラール(J.ヴァンデルロースト)
 ・組曲第一番(G.ホルスト)

<第2部>
 ・シバの女王ベルキス 全曲(レスピーギ/木村吉宏)


曲紹介:
−組曲第一番− G.ホルスト

 2009年は何の年でしょう?ニクの年?地デジまであと2年?いやいやいや、ホル スト1組生誕100年でしょうがー。なんと組曲第一番が1909年に完成されてから、 はや100年ですよ。いろいろなことがあったねぇ。
さて、ブラバン☆キッズなら誰でも知ってるこの曲、「いちくみ」なんて呼ばれ ますね。この曲をここまでの知名度に育て上げたのは、他でもない指揮者フレデ リック・フェネル。数々の吹奏楽団だけでなくクリーヴランド管弦楽団ともこの 曲を録音した彼は、「吹奏楽の指揮者になりたいのであれば、このスコアを徹底 的に勉強して、この曲とともに生活しなさい。でもこの曲を習得するには一生か かります。」というような言葉を残しています。「またまたー、フェネル兄さん 、大げさだよー。中学校の時から演奏してるけど、そんなに奥深い曲なのー?」 と思ってしまいがちですが、腰を据えてスコアを分析してみると、うーむ。確か にこの曲の持つ細部に至るまでの関連やつながりにひたすら感嘆の声が出てしま います。
第一楽章冒頭の8小節のフレーズが3楽章の最後までこの曲を支配しているからこ そ、一貫性をもった組曲としてあるまとまった存在感をもたらすんですね。しか し、ある程度まで曲が理解できた時、どうも筋の通らない、捉え所のない、ウナ ギをつかもうとする時のアノカンジにたどり着く。ツカメソウデ、ツカメナイ。 あ、、、フェネル兄やんが、一生かかるって言ってた…
吹奏楽への絶大な影響力や、シンプルだが高度な作曲技法という高評価に反して 、「組曲第一番」というネーミングの軽さ。このギャップが受け手に様々な憶測 を呼ぶ。果たしてホルストはこの曲を真面目に書いたのか、半分舌を出しながら 書いたのか。前者であってほしいのはヤマヤマだが。
20世紀に入ったにもかかわらず、バロック音楽の形式であるシャコンヌが第一楽 章。これは新古典主義の流れを意識してなのか、それともパロディ?ブラームス の最後のシンフォニーでシャコンヌ使ったのと同じノリ?第二楽章は、およそ箸 休み的なテンポではない間奏曲。イギリスの天気を思わせる、わざと曇りっぽい 調性で綴られた第三楽章のマーチ。出てくる出てくる小さな「?」が。

イギリスの作曲家ホルスト(1874-1921)がこの曲を書いたのは35才の時。一般的な イメージでは、35才っていうと、そうそういい加減な作品も書けないし、作曲技 法におけるオリジナリティも自覚するようなお年ごろ。組曲「惑星」の完成はこ の7年後。組曲第一番の完成当時は、まだまだ吹奏楽の為だけに書かれた曲が少な かった時代。そんな中ホルストは「吹奏楽のオリジナル曲」というカテゴリーが 確立されることを願う一人でした。組曲「惑星」の火星と木星も自身で吹奏楽の ために編曲もしました。
その時代にあって、「吹奏楽のための組曲第一番」というネーミングは、全然軽 くなんかないない、むしろ直球勝負の大センセーショナルな曲名だったことでし ょう。もちろん、作曲技法も洗練された彼一流の手法がこめられています。名曲 たるべくして名曲なのですね。
天国でホルストが「は?知らんし。オレ、テキトーにつくったし。」と、はんに ゃ風につぶやいていないことを天に祈ります。

1.シャコンヌ(Chaconne)
冒頭の8小節のテーマが15回変奏される。特に「Es-F-C」という長2度と完全5度の 音程は、全三楽章を通じて、この曲を支配している。このテーマ自体も多様化し やすいものになっており、素晴らしい。 シャコンヌは短い低音の旋律を繰り返しながら、その上に変奏を築きあげていく バロック時代からある変奏曲。ホルストは制約がある中で多様性をもたらすこと に成功している。

2.間奏曲(Intermezzo)
第一楽章の冒頭のテーマが基になって旋律が作られていく。まだ管弦楽が主流だ ったこの時代に、吹奏楽にしかみられない斬新なオーケストレーションが随所に 見られる。
リズムにおいても第三楽章との関連性もあり、独立した楽章ではなく、両端楽章 の橋渡し的性格も持つ。

3.マーチ(March)
第一楽章のテーマと単純な長音階とを加工して魅力ある旋律が形作られている。 金管を主体にした前半部は、長音階の下降形を加工した旋律が奏でられ、中間部 は木管を主体として、前半部のテーマと第一楽章のテーマを織り交ぜた旋律が奏 でられる。 
後半部は前半の旋律を木管で、中間部の旋律を金管で奏されるが、それが見事な 作曲技法で混然一体となる。


−バレエ組曲 シバの女王ベルキス− O.レスピーギ

かーしむ、かーしむ。いや、間違えました。むかーし、むかしの紀元前10世紀頃 、旧約聖書にも登場するソロモン王と女王ベルキスの伝説、いわばラヴストーリ ーをテキストとしたこの曲。「やべー、ソロモンまじかっこいんですけど。ホレ たかも。あ、これガチだ。」とベルキスが平成生まれであれば言いそうなストー リー展開。ベルキスから恋に落ちるパターンです。レスピーギはこの伝説にかね てから魅力を感じていました。
オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)は、バレエ全曲版を1930年から31年にかけ て作曲し、34年に4部からなる組曲としました。病を理由として実現できませんで したが、二つ目の組曲の構想もあり、また彼が天に召される2年前に組曲を完成し たことを考えると、この作品への思い入れはかなりのものがあったようです。
バレエ全曲版は、上演に80分を要し、通常のオーケストラに加えてシタールや風 音機などの特殊楽器、またオフ・ステージにはブラス隊、合唱、ヴォーカルのソ リスト数名、それにこの伝説的な物語を吟詠するナレーターなど、大規模な編成 を必要としました。イタリア・ミラノでの1932年の初演は大成功で、海を渡りニ ューヨーク・タイムズでも絶賛されました。

ブラバン☆キッズなら誰でもレスピーギにハマる時代があります。男子中高生が 彼の「ローマの祭り」を聞くと、とにかく血が騒ぎ、叫び、夕日に向かって走り 、盗んだバイクで…などの症状にさいなまれます。このようにレスピーギといえ ば、とにかく激しい、派手、楽しい、という印象がありますが、実は静かで綺麗 な曲も多く書いているのです。
彼が生きた時代は1890年代〜20世紀初頭にかけての世紀末芸術と呼ばれる時代の 転換期。アール・ヌーヴォーやユーゲント・シュティールに代表される、前時代 の芸術から離れて新たな芸術表現を生み出そうとした時代でした。同時代人とい うと、ガウディ、ムンク、クリムト、ニーチェ、ヴェルレーヌ、ダーウィン、テ ィファニー、フロイト・・・誰もが前時代とは違う切り口での表現を模索してい ました。その中で彼は、イタリア・ルネッサンスと呼ばれる20世紀イタリアの復 古主義の一翼を担い、イタリアの伝統的音楽の要素と民族主義を巧みに結びつけ る作風で自身の個性を発揮しました。
高名なヴィオラ奏者でもあった彼は、リムスキー=コルサコフに作曲を師事し、 管弦楽法などに大きな影響を受けました。また、ブルッフ、R.シュトラウス、ラ ヴェル、ドビュッシー、ラフマニノフなどにも影響を受け、作品にもそれが表れ ています。
先のホルストとは5才後輩にあたります。二人とも世紀末芸術の空気に触れながら 、それぞれのオリジナリティを確立していきました。有名なローマ三部作の2年後 に取り組んだ本作品で、彼は新たな地平を切り拓こうとしたのです。

1.ソロモンの夢(Il sogno di Salomone)
松明が灯されたソロモン王のハーレムの場面から曲がはじまる。短い、考え込む ような前奏のあと、星の輝く夜空を見つめているソロモンの孤独な姿が描写され る。その後、膨大な数の従者や宝物を携えてはるかな旅から到着した女王ベルキ スが、ソロモン王に謁見する入場の音楽へと移る。表情豊かなチェロ(原曲)の 独奏のあと、Appassionato(情熱的に)と指示された愛の音楽が奏でられる。聡 明で大いなる力を持ち、かつ美しい王の姿に、若き乙女は感動を抑えきれず落命 した子鳩のように彼の足元にくずれ落ちる。ここまでがソロモン王の「夢」とし て描かれる。正夢がのちに現実となる。
美しく自然に調和した流れを持つ楽章だが、和声進行など確実に新時代のものが 使われている。

2.戦いの踊り(Danza guerresca)
ベルキス女王を歓待する宴の余興で、戦士や競技選手たちの勇壮な踊りが描写さ れている。バレエ全曲版に基づけば、本来は第2・3楽章が逆の順序で演奏される 。
この楽章の二番目の部分は音階の第二音と第六音を使用せず、ドビュッシーなど の五度の和声を思わせる曲調になっている。数少ない素材しか用いていないにも かかわらず、多彩なリズム構成とオーケストレーションにより刺激的かつ多様性 をもった曲に仕上げられている。

3.夜明けのベルキスの踊り(La danza di Belkis all'aurora)
ソロモン王の想いに応えたかのように朝方目覚めたベルキスが、薄いベールをま とい、素足で夜明けに踊る様子の音楽。オトナ&アマーい楽章。
アラビア音階と従来の和声が巧みに融合され、また背景としてのリズムが一貫性 を持つために、楽章を通して関連性を失わずに進行していく。リムスキー=コル サコフやラフマニノフを思わせるドラマティックな和声進行も随所に見られる。 最後はもう一度夢の世界に戻されるかのように、旋律が和音の中に沈んでいく。

4.狂宴の踊り(Danza orgiastica)
バレエのフィナーレを飾る、ソロモンとシバの国の連合を祝う音楽。ソロモンの 壮麗な宮殿では歓喜の宴が用意され、若い男女、戦士、奴隷たちなど、様々な肌 の色を持つ諸民族の大群が立ち上がり、自由に笑い声を上げ、触れ合う喧騒の中 、踊り狂う。そして、熱狂が最高潮に達するとき、舞台高所奥にだんだんと二つ の玉座が照らしだされ、そこには威厳高く、ソロモン王とシバの女王が座してい る・・・金の偶像のように不動の姿で。
(アキラ)

 第一回演奏会のチラシ
 第一回演奏会のパンフレット

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